2018年8月15日水曜日

民間人だからできた学術交流

2014年、神戸平和研究所の理事長杣浩二氏は研究論文をモルドバの大学で発表できることになっていました。杣理事長は在イスラエル・モルドバ大使館に依頼してモルドバの大学でそれが実現することになっていました。ところが、1014年の夏になっても在イスラエル・モルドバ大使館からモルドバの大学の招待の通知はありませんでした。



なぜ、在イスラエル・モルドバ大使館がそれをしようと約束していたかというと、モルドバ出身のイスラエルの著名なアルベルト・シャハン教授がモルドバの大学で杣理事長の研究論文を発表しようと働きかけていたからなのです。シャハン教授はモルドバ出身で『失われたイスラエル10部族の足跡』という研究書を書いて、それが杣理事長の研究の先行研究となりモルドバの大学が新しい学説の発表に最もふさわしいと考えられていました。

ところが、在イスラエル・モルドバ大使館は約束だけして動きませんでした。そういういきさつを知っていた私達の根田芳夫顧問が杣理事長と私がお会いする機会を作りました。そこで初対面の私は杣理事長に「モルドバ大使館はモルドバの経済復興に忙しいはずです。モルドバのワインをイスラエルに売り込んだり、イスラエルから経済支援を引き出したりするのがモルドバ大使館の一番優先しなければいけない仕事です。もちろんモルドバの大学と連絡をとって研究発表の場を提供することは日本とモルドバの学術交流としては政府としてもやりたいことには違いありませんが、モルドバの経済復興という最大優先課題からするとどうしてもあとまわしになるわけです。ここは大使館に依頼する のではなくてモルドバの大学に直接折衝すべきです。ついては近日中に沓澤美喜理事がモルドバに行きますので、モルドバの著名な大学に折衝するのが一番いいと思います」と提案しました。

すると直ちに杣理事長は英文の論文と資料を用意して美喜理事に折衝を依頼しました。美喜理事には1994年以来モルドバで築いてきた人脈の中にモルドバの国家を代表する著名なる教育者セラフィマ・サワ先生がいますので、すぐに相談しました。サワ先生は直ちにモルドバ国立教育大学のキクス学長に相談しました。キクス学長は杣理事長の新しい学説の発表をモルドバでやりたいという理由を理解すると直ちに秘書に手配させ、数週間後には杣理事長に招待状を発出したのです。

美喜理事はその招待状を日本に持ち帰り、いよいよモルドバ国立教育大学の講堂で研究者たちを集めて発表することになりました。2015年夏、学生たちは夏休みでしたがキクス学長は研究者たちを呼び集め杣理事長の新しい学説を聞いてくださいました。杣理事長は英語で古代ユダヤ人と日本人との出会いがあって文化が共通している事実を多くの証拠をあげて実証しました。特に旧約聖書の冒頭に出てくる命の木を想起させるイスラエルの7本の燭台メノラーの研究は杣理事長の最大の特徴でした。メノラーを研究していくと世界の文化はひとつにつながっていることが実証できるのです。しかも、モルドバはユダヤ人がモルドバ国民の40パーセントも暮らしていたところで研究発表するには最もふさわしいところでした。発表の会場にはユダヤ人の若い研究者も参加して熱心に質問していました。このようにして新しい学説の発表は成功し歓迎して迎えられ、大学からはキクス学長の最大権限が行使され、杣理事長はその日、モルドバ教育大学名誉教授に就任したのです。キクス理事長からは「いつでも大学に来ていただいて講演をしてください」と地位を約束されました。

このようにして民間人だからできた学術交流があるわけです。私たちは政府がしたくてもできない分野ですることがあると考えてここまで活動してきました。政府がやってほしくない反政府活動は私達の活動の目的になることはありませんが、今回のように大使館がやりたいと約束までしていて、しかしやむを得ない理由があってできなかったことを、私達のような民間人ができるということはほかにもたくさん残されていると思います。

写真の1枚目は左から杣氏と沓澤美喜理事、シャハン教授、通訳。2枚目はセラフィマ・サワ教授のご令息でモルドバ日本友好協会理事サワ氏と杣氏、ジェシュ氏(杣氏の補佐官)、モルドバ教育大学キクス学長。3枚目は私、杣氏、サワ氏。(文:沓澤正明)


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