2018年7月4日水曜日

EUとロシアのはざまに立つモルドバ

EUとロシアのはざまに立つモルドバ
 
よく受ける質問に「モルドバはEU寄りですか、ロシア寄りですか」というのがあります。モルドバは東ヨーロッパに位置していますが、宗教的に言えば明らかにロシア正教というキリスト教を信じている国民が圧倒的に多く、カトリックやプロテスタントのキリスト教とは雰囲気が違います。
 
日本は仏教、神社、キリスト教など様々な宗教がありますが、モルドバは圧倒的にロシア正教の国です。モルドバでは宗教活動は自由ですが、内なる国教としてロシア正教が存在しています。道のあちこちにキリスト像を見かけます。日本でしたら道のあちこちにお地蔵さんの石像を見かけますがモルドバではキリスト像です。
 
ロシア正教は昔ギリシャ正教と呼ばれていました。オスマン・トルコ帝国によってコンスタンティノープルが陥落してイスタンブールと呼ばれるようになってからギリシャ正教の中心がモスクワに移されロシア正教となりました。
 
古代ローマ帝国時代のキリスト教会はカタコンベ(地下教会)でした。迫害を逃れるため地下活動をしていました。313年キリスト教公認、392年キリスト教国教化。公認とはほかの宗教と同等にローマ帝国全域での宣教を認めますという意味で地下教会時代の終了を意味しています。国教化とはキリスト教以外の宗教活動は禁止しますという意味があります。
 
西ローマ帝国は476年ゲルマン民族の大移動によって滅亡しましたが、東ローマ帝国は1453年オスマン・トルコ帝国によってコンスタンティノーブルが陥落するまで続きました。東ローマ帝国の国教はギリシャ正教でした。コンスタンティノーブルは第二のローマと呼ばれ、ギリシャ正教の中心がモスクワに移動してからはモスクワが第三のローマとなってギリシャ正教はロシア正教と呼ばれるようになりました。
 
モルドバはローマ帝国時代にはダキヤと呼ばれていましたがそのあとモルドバ公国となり現在はモルドバ共和国となっています。高校の歴史教科書に掲載されている歴史地図をよく見るとモルドバ公国という表示を見つけることができます。
 
そういう歴史的背景を持っているモルドバは現在EUから経済支援を受けて幹線道路がEUとまっすぐ繋がり美しく舗装されています幹線道路に面してトラクターやコンバインの展示場を最近数か所見ることができるようになりました。モルドバはあと5年もしたら馬車がいなくなり農業は機械化され農産物がどんどんEUに輸出される時代が来るでしょう。
 
近年、議会や政府はEU寄りの政策を続けています。ところがここにきて大統領選挙方式を議会の議員票決で選出する方式から、国民投票で選出する方式に改正してみるとロシア寄りのプーチン支持者である40代のドドン氏がモルドバの大統領に就任しました。
 
経済支援はEUから受けていても心情的にはロシア人大好きというEUとロシアのはざまに立つモルドバ人像が浮かんできます。写真はフォトアーティストみやこうせいさんが撮影した首都キシナウの中心にある教会。(Ⓒみやこうせい、写真の転載を禁じます)(報告者:沓澤正明)

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