神戸でクラシック音楽祭を7回開催し、 200回以上もコンサートを成功して
こられた私たちの曽根理事は音楽活動のかたわら本を書いておられ ます。
曽根理事は前作『暦……千年の孤独』につづき、今回、 日本文学館から
『目に見えるもの見えないもの』という新著を出版しました。
定価600円+消費税。
88ページの文庫本の中に14編のてのひらのような小説が星 のように散りばめられています。
前作は源氏物語千年紀を記念して日本文学の歴史を感じさせる文語 文でしたが今回は私たちにわかりやすい口語文で、世界中の文化・ 文明に思いを広げるような小説集です。
きっと読む人をドキドキさせるでしょう。
中でも私が一番いいと思ったのは「子供が恐い老人」 というわずか4ページの小説です。
というのも、 この1年間に電車の中で6回も青年が私に席を譲ってくれたという身近な出来事を経験したからです。
東京の地下鉄やJR総武線で何度もそれを経験しました。
とても気分爽快でした。
日本にそういう青年がいてくれて「うれしいな」と思いました。
ところが、この 小説に出てくる老人は自分が立って小学生の子供たちに席を譲ろう とするのです。
読みながらどうしてだろうと思わずにおれませんでした。
その本当の理由は小説を読んでいただくしかありませんが、 著者はそれを
「家族が社会全体が、子供たちを保護し、労わるべきだ」
「 子供がすくすく伸びやかに成長する世の中は大人が作らねばならな い」
「 子供たちが無事成長することが大人の最大の目標であり義務だと思 う」
と表現しています。
この小説を読んで、 私たち大人社会はそれと全く反対の社会を作ったのではないか
と考えさせられました。
子供の教育がビジネスの対象となり、
社会の役に立つ教育を追求するあまり子供の将来が 奪われたり、
大人の最大の目標が人格の消費におかれたりしている現実があるの ではないかと思いました。
そして、 子供の教育のための社会環境を創造することが重要だと思いました 。
子供の教育のための「環境創造」 こそ大人の最大の義務であると思いました。
目に見えないものを信じる人にも、 信じない人にも一読をおすすめしたい本です。
(日本モルドバ友好協会理事長 沓澤正明)
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