2017年1月10日火曜日

帰国報告1 成功したピアノによる国際交流


私は2016年9月15日から10月13日までの間、①日本とモルドバとの国際交流②モルドバへの支援活動③新規プロジェクトの調査を目的としてモルドバを訪問しました。

最初に帰国報告1としてピアノコンサート実現までのエピソードを紹介します。

当初、首都キシナウと沿ドニエストル共和国というドニエストル川両岸における平和のためのコンサートと、南部地方都市カフールでロックコンサートをしたいと準備を進めていましたがロックコンサートは音響機材の準備とアーチストの日程調整に無理があることがわかり、ピアニストだけを日本から派遣することにしました。9月23日にフィラ・モニカという会場に予約して準備しましたが思いがけない問題が次々にモルドバ日本友好協会理事長ライサ・ブラドゥッツアヌから報告されました。

主たる問題はモルドバのピアニストも日本のピアニストもモルドバでは知られていないのでチケットが売れないというものでした。それから日本モルドバ友好協会が主催するわけだから大使級の著名人を会長として挨拶できるようにしてほしいという信じられないような問題も提起されました。全くモルドバ側の受け入れ態勢はそっけないものでした。深刻な事態でした。

それだけでなく2016年8月23日にホームページで3大企画を発表し9月20日から9月28日までモルドバツアーの募集もしていました。ツアーをしてほしいという要望が数人ありましたので企画したのですが、実際に企画してみると「行けない」理由ばかりでツアーは翌年に延期することにしました。ツアーがなければピアニストを派遣するだけでよいと思っていましたが、とても安心してモルドバ側にコンサートを依頼できる状況でありませんでした。そのような状況で急遽私がフライトすることになりました。

モルドバで会議をしてみるとコンサートには100人集めるのも困難という回答でした。そこから連日人脈をたどって訪問活動が始まったわけです。沓澤美喜理事が先にモルドバに来ていましたので二人で精力的に動き始めると、ライサ理事長もフル回転で放送局、インターネット、大使館、大学、カザネスティ子供デイケアセンターなどを動かし始めましたその結果当日は350人もの聴衆が集まってくれました。やれば人は動いてくれるんだなあと思いました。

一方日本では2016年9月20日、台風16号が関西空港を直撃し国内線50便が早々と欠航を決めるというニュースが流れて、果たしてピアニストは無事モルドバに到着するのか問題となりました。私たちは、その前年には京都の和晃技研株式会社岩崎社長ご夫妻にモルドバへお越しいただいて電気事業改善のため国際会議をするという目的で大学や政府の専門家を集めて準備をしていましたが、岩崎社長ご夫妻がモルドバ入国する直前にトルコでテロが発生し、イスタンブール空港で乗り換える時にモルドバ行きの飛行機に乗れないという緊急事態に遭遇し、やむを得ず国際会議を取りやめるという苦い経験もしていました。

そのような環境の中、ピアニストはモルドバに向けて単身、フライト6時間前に関空リムジンバスに乗り込みました。バスは関空連絡橋の手前で停車しピアニストは降車を余儀なくされ、外で雨に濡れながらバスの運転再開を待たねばなりませんでした。予想通り、渡航に難ありでした。関空連絡橋は台風のため1時間以上閉鎖されバスも電車も不通となり関西空港は陸の孤島となりました。そのあとは何の問題もなくモルドバに予定通り到着できましたが、後日ピアニストは「あの雨はみそぎのようでした」と振り返りました。以前にモルドバの学生アンドレイ君を初めて日本に招待した時も台風の直撃で3時間ほど関空連絡橋が閉鎖されました。国際ボランティア活動には信じられないような出来事が起こることを予想して準備しなければいけないことを痛感しました。

ピアニストの名前は武田有賀です。スペインとドイツに留学しラテン・スラブ・アラブの音楽を研究してきたベテランです。2011年モルドバ独立20年祭で全国各地をツアーしただけでなく、2012年東京乃木坂の国立新美術館で開催された総合水墨画展で「作家大賞並びに内閣総理大臣賞」を受賞したアーチストです。

モルドバ人のピアニストはモルドバの大学からルーマニアの大学院で作曲を研究するまで私たちが奨学金支援をしてきた秘蔵のリディア・チュブクです。首都キシナウのフィラ・モニカでピアノコンサートを開催することを決めたのはリディア・チュブクで「ピアノの音色がいい」という理由でした。フィラ・モニカはロシアの著名なピアニストが演奏することで高い評価を受けています。

武田有賀のプロフィールはベールに包まれているかのようにつつましく神秘的ですが、オーケストラと共演したり松方ホール音楽祭で大賞を受賞したりしています。さらにアルゼンチン出身の作曲家ピアソラの編曲で世界的に名の知られている山本京子とデュオ「ムムキ」を結成し全国各地で音楽活動を地道に続けています。今回演奏した曲は『チャルダッシュ』『リベルタンゴ』『火祭りの踊り』『アダージョ』『黒い大地』で350人のモルドバ人というラテン民族の血を沸かせ魂を揺り動かし魅了しました。日本『五木の子守歌』『濤声』『島唄』も演奏され全曲武田有賀自身が編曲したものでした。ピアノという芸術文化による国際交流目的を達成し大成功でした。

リディア・チュブクとの練習は数回でしたが、ロシアの作曲家グリンカの『ワルツファンタジー』の20分ほどの連弾はピッタリ息が合い最高の演奏で、聴衆は「ブラボー」を叫びながら総立ちとなり拍手が鳴りやまず、感動に包まれた聴衆は記念写真を取り合ったりしてなかなか会場を離れませんでした。著名なバイオリニストでもあるフィラ・モニカ館長が「心の底から湧き上がる感動で胸が震えました。素晴らしかった」と絶賛しました。画像は会場で配布されたプログラムの表紙。(報告 沓澤正明)



画像は会場で配布されたプログラムの表紙。(報告 沓澤正明)

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