2018年2月22日木曜日

兵庫県国際交流協会で講演

2018125日兵庫県国際交流協会の交流ギャラリーホール30人ほどのモルドバセミナーを開催しました。私が講演しましたのでその時の講演内容を報告します。(報告者 沓澤正明)
 
神戸新聞に掲載されましたので次のリンクも参考にしてください
 
東欧の知られざる小国に豊かな生きる意味を見出すかもしれない…というテーマで私たちの活動は続いてきましたが、今般、兵庫県と共催して『モルドバGallery写真・水墨画展』を115日から26日まで開催し、最終日前日のモルドバセミナーで講演しました。
 
モルドバGalleryに展示されたみやこうせい氏の写真の内、6点を使って講演しましたがブログではポスターに使用した写真1点のみを公開します。(なお写真は転載を禁止します)
 
写真1は、国立イヨネスコ劇場の喜劇のようすで、5組ほどの男女が向かい合ったりしてピエロのような派手な服装で演技している構図です。男女のいろいろな情景です。妊娠しておなかの大きな女性を演技している組み合わせの男女もあって、家庭での夫婦の情景が誰が見てもおかしくて笑ってしまうようなしぐさで表現されています。まさしく東欧の知られざる小国に豊かな生きる意味を見出すかもしれない…という私たちの活動のテーマを彷彿とさせてくれます。
 
劇団イヨネスコ劇場は何度か日本でも公演されました。日本の演劇の研究者で文部科学省の援助を受けてモルドバに留学していたお方にお会いしたこともあります。2007828日か92日まで東京で劇団東京乾電池と劇団イヨネスコ劇場が『授業』という劇作家イヨネスコの代表作を友情講演した時は私たちも協力しました。その時のチラシを見ると野田秀樹氏が「このようなものを、もっともっと日本で見られるようになれば…」と絶賛していることが分かります。モルドバの演劇はヨーロッパでも高く評価されています。
 
今回のモルドバセミナーのテーマは『行ってみたい、行ってみようモルドバ』でした。
 
1.     モルドバは1991年独立した共産主義から民主主義への移行国
 
今から26年前、1991年旧ソ連が崩壊しました。その時モルドバは独立しました。モルドバ人は民族的にはルーマニア人でありロシア語とルーマニア語を話しています。モルドバは共産主義から民主主義への移行国であり、独立すると多くのロシア人がロシアに引き揚げただけでなく、工場の生産機械も引き揚げたため多くの工場は閉鎖され失業者であふれました。
さらに追い打ちをかけるようにドニエストル川をはさんで領土が東西に分断し19921993年ドニエストル戦争が勃発し、2000人の青年が死にました。
 
そのような工場閉鎖と戦争によって経済が破壊されとうとうモルドバは東欧最貧国となりました。旧ソ連時代の経済水準に復興するのに20年かかりました。
 
2.     当初430万人いた人口の半分が外国へ出稼ぎに行き「経済難民」化。
 
モルドバには旧ソ連圏からの原材料が来なくなりました。失業した男性の多くはアルコール中毒になりました。国外への出稼ぎと女性の自立よって少しずつ経済水準を回復してきました。独立当時430万人いた国民のうち約半分がロシアやEUへ出稼ぎに行き「経済難民」と化しました。人口が350万人程度に激減しました。シリアの難民は国連によって救済されましたがモルドバの「経済難民」は誰にも振り向かれませんでした。
 
3.     経済大国日本とモルドバの経済格差は比較にならない。
 
2015年の統計によると経済大国日本の一人当たりのGNP324万円であるのに対して、モルドバの一人当たりのGNP18万円であり日本の約18分の1日本人がモルドバに行くのは簡単ですが、モルドバ人が日本に来ることはほぼ不可能です。
 
4.     国際ボランティアの目的は政府がしたくてもできない分野への支援
 
写真2Ⓒみやこうせい この画像は非常に貴重なものです。沿ドニエストル[共和国]
の域内にあるコチエル神学校で小学1年生ぐらいの女の子が心にしみわたるような
静かな曲を歌いました。コチエルとドゥバッサリ[特別市]の市民は3万人ぐらいいて
モルドバの支援を受けてひっそりと平和が訪れるのを待っています。沿ドニエストル
[共和国]は国連の未承認国家であるため日本人の入国は認められていませんがモ
ルドバ人で入国を許可されている人と一緒であれば日本人でも入国可能です。朝鮮
半島の分断国家と同じような様相を呈しています。
 
 
 
政府がやってほしくないことは国際ボランティアの目的にはなりません。つまり、反政府活動は国際ボランティアの目的とはなりません。1991独立以来、モルドバ政府は経済復興に重点をおいてきましたので、教育や福祉分野への投資は抑えられてきました。
 
飛行場や幹線道路はどんどん投資されてきましたが、スポーツ施設や文化施設は旧ソ連時代のまま放置されてきました。
 
学校は旧ソ連時代に整備建設され今もそのまま使われています。教会は大半が旧ソ連時代に爆破されましたが今は全部復興しています。学校と教会は復興しています。
 
私たちの国際ボランティア活動は学校に通えない子供への支援、学生支援、女性の自立支援、伝承音楽・舞踊の復興支援、文化の国際交流支援等が対象となります。
 
2017年秋はキシナウのユダヤ文化センター、沿ドニエストル[共和国]のコチエル神学校、カララシの市民センターとカザネスティ市民センターの4か所でコンサートを開催して日本とモルドバの音楽による国際交流を実現しました。日本からはシンギンザレインが音楽で国際交流し大成功でした。
 
5.     問題意識:人の善の心は完成しているわけではないので本人の意識的な努力と人の励ましが必要。
 
人には善の心と悪の心があります。人は誰でも善の心で生きようと努力しています。
ところが、善の心は完成しているわけではありません。善の心と悪の心が、人間の中において作用する程度は同じではありません。悪の心は完結的、結実的なので常に容易に発動され、表出されます。しかし善の心は未完成なものであるために、常に意識的に努力し励ますことなしには、その結実は難しいのです。善の心は挫折しやすいので善を成就するには本人が意識的に努力するだけでなく、人の励ましが必要です。ここにボランティアの意義があります。
 
写真3はカザネスティという地方の学校の高学年の男の子が5人ほどアップで写っている構図です。モルドバの学校は小中学の児童生徒が9年間通います。学校の高学年は日本の学校の中学生に相当します。
 
その中に一人カザネスティ子供デイケアセンターで保護している男の子が写っています。その男の子を私は小学校に入学する前から知っていましたが、ある日、井戸でバケツをつるして二人で遊びながらくみ上げていました。その時のことは忘れられない思い出です。くみ上げたバケツの水をこの男の子は飲もうとして夢中になったので、私は「ハッ」として思わずバケツをひっくり返してしまいました。私たちは井戸の水は飲まないし、キシナウの市内でも水道の水は飲みません。いつもスーパーからミネラルウォーターを買ってきて飲みます。でも、田舎の子供たちは平気で井戸水を飲みます。この男の子はすでに腎臓を侵されていていつ発病してもおかしくない状況であることを聞いて知って いました。ですから井戸水を飲ませたくありませんでしたが現実は私たちの力では変えようがありません。残念ですが。
 
6.     人間存在とはindividualでありdividual分人)の総合実体相
 
これは作家平野啓一郎氏が『私とは何か』(講談社現代新書)という本で提唱したボランティア活動する人のための新しい概念です。この概念によってボランティア活動の自己矛盾を克服できます。つまり「法律上の個人はこれ以上分分割できない」わけですが、事実上の個人は様々な人間関係で「分人」として生活できます。人間存在とは分人の総合実体相である表現できます。
 
神戸新聞の記事となっている写真に私がアップで写っていますが、その背景にある写真を注目してほしいです。母と子供たちを父親が写真を撮っているところです。ご夫妻はそれぞれ仕事を持っています。モルドバに主婦という概念はありません。人は職業人であるだけでなく父親であり、夫でもあります。職業人であり時には母親であり妻となります。時にはボランティア活動をしていてもいいわけです。分人とはそういう概念です。
 
7.     結論:ボランティア活動によって豊かな生きる意味を見出す。
 
もはや人間は経済的動物として生きるだけではなく政治、経済、社会、宗教、文化、芸術、スポーツなど多面的に生きているわけです。ボランティア活動はそのような多面的な生き方を包含しているので豊かな生きる意味を見出すことができます。『生きる意味』(岩波新書)という本は文化人類学の研究者、東京工業大学教授上田紀行が著しました。
 
8.これからは利他主義ではなく他我的自覚によってために生きなければならない。
 
利他主義は利己主義の反対語。仏教用語。仏教では無我を強調します。他我は自我の反対語。神学用語。ここでの他とは神であり、他我とは神との関係における我。自我の研究だけでは人間の矛盾性を克服できないことが明らかですのでこれからは他我を研究する必要があります。
 
写真4はモルドバの首都キシナウ中心の公園にある教会と教会の鐘楼が写っています。陽がおちかけて、教会の白い壁の影が薄れゆく感じがします。ちょうど教会の中間くらいの高さのところを横切るように、しだれのような淡い光のイルミネーションが教会や鐘楼を美しく浮かび上がらせている構図です。みやこうせいさんはいかなる時も全然フラッシュを使わないでこのような自然の光による情景を引き出しています。
 
モルドバ人の心の中にはこのキシナウの教会がドッカリと座っているに違いありません。永遠、不変、唯一、絶対がそこにはあります。
 
9.自分探しのボランティア活動から自己実現のボランティア活動へ。
 
自分探しのボランティア活動には限界があります。途中でやめたりします。自己実現のボランティア活動を目指したいと思います。
 
10.新しいボランティアの三大理念『創造する力、創造的復興、環境創造』
 
   創造する力は自由な雰囲気で発言できる会議から生まれてきます。自由な雰囲気が最も重要ということです。
ディズニーのアニメが不振に陥ったときのことです。ピクサーという二人の若い研究者が『アナと雪の女王』を成功させディズニーを救いました。その時のキーワードが創造する力でした。創造する力がボランティアにも必要なことは論を待ちません。
 
   創造的復興は1995年阪神大震災の時の貝原俊民前兵庫県知事が提唱した概念です。2018年の年頭、井戸敏三現兵庫県知事は「もはや創造的復興は終わった」と宣言しました。
 
   環境創造は社会のための教育ではなく教育のための社会環境を創造しようという新しいパラダイムです。経済大国日本は多くの高学歴者を社会に輩出してきましたが、高学歴者の両親を持つ子供のうち100万人が「ひきこもり」になっているという統計があります。
ここでは高学歴が問題となっているのではなく「社会のための教育」というパラダイムが問題となっています。教育のための社会環境を創造しようという意識は世論として日増しに高まっています。それが環境創造です。
 
写真6はカザネスティ学校の高学年の女の子が5人ほどアップで写っている構図です。左端の子はカザネスティ子供デイケアセンターで保護されている中3年生です。学校に通うことができないぐらい貧しかったので昼間だけ保護してきたわけですが、いよいよ今年は卒業です。きっと大人になってもセンターで一緒に過ごしたことを誇らしく思い出すだろうと思います。環境創造の重要性を感じさせる一枚です。
 
 
写真について
        
今回のモルドバセミナーには『モルドバGallery写真・水墨画展』で発表された写真を使って説明報告をしていますが、インターネットでの公開はできません。ポスターに使用した写真だけ公開しました。つきましては本年同様の写真・水墨画展を京都、広島、千葉、鶴岡(山形県)で順次開催を計画していますのでお越しいただいて写真を鑑賞していただけるとありがたいと思います。また、カラーではなく白黒でもよろしければ、モルドセミナーの会場で配布したレジュメに写真が6枚含まれていますのでプリントアウトして差し上げることができます。写真閲覧のご希望者は下記へお問い合わせください。
 
お問い合わせは沓澤(くつざわ)まで。
電話:078-594-2785
 
 
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